おおすみ法律事務所 鹿屋市の弁護士事務所

法律情報

遺留分減殺請求について

1 遺留分減殺請求とは

「遺留分」とは,被相続人が有していた相続財産について,その一定割合の承継を法定相続人に保障する制度です。制度の目的は,相続人の生活の保障にあるとされています。

被相続人が贈与や遺贈などにより財産を処分した結果,相続人が現実に受ける相続利益が法定の遺留分額に満たないときに,遺留分が侵害されたとして,財産の取戻しを請求することができます。これを「遺留分減殺請求」といいます。

2 遺留分権利者

「遺留分」は,兄弟姉妹を除く法定相続人,すなわち①配偶者,②子,③直系尊属に認められています。

子の代襲相続人も,被代襲者である子と同じ遺留分を持ちます。

相続欠格,廃除,相続放棄により相続権を失った者には遺留分はありません。
ただし,相続欠格,廃除の場合には,代襲相続があり,代襲相続者には遺留分が認められています(民法1044条,887条2項・3項)。

3 遺留分の割合

ア 直系尊属のみが相続人であるときは,被相続人の財産の3分の1が遺留分の対象になります。
被相続人の両親2名のみが相続人である場合,遺留分の対象となる遺産の割合は3分の1で,これを相続分の割合で取得することになるため,両親はそれぞれ6分の1ずつの遺留分を取得します。

イ その他の場合は,被相続人の財産の2分の1が遺留分の対象になります。
配偶者1人と子2人が相続人の場合,遺留分の対象となる遺産の割合は,2分の1で,これを相続分の割合で取得することになるため,配偶者は4分の1,子2人はそれぞれ8分の1ずつ遺留分を取得します。

4 遺留分減殺請求の効果

遺留分減殺請求は,減殺請求の意思を表示しただけで,当然に効力が発生します。
贈与や遺贈の効力は,行使された遺留分に限り,当然に消滅することとなります。

5 遺留分減殺請求の方法

遺留分減殺請求は,裁判上の請求である必要はありません。ただし,後日,時効の争いにならないよう,内容証明郵便によって意思表示をするべきです。

6 遺留分減殺請求と時効
遺留分減殺請求権は,遺留分権利者が,①「相続開始の事実」と「減殺すべき贈与・遺贈があったこと」を知ったときから1年,もしくは②相続開始から10年で消滅時効に係ります。

「減殺すべき贈与・遺贈があったこと」を知ったと言えるには,単に贈与又は遺贈の存在を知っただけではなく,贈与又は遺贈により遺留分が侵害され遺留分減殺ができることまで知ったといえることが必要です。

7 遺留分算定の対象となる財産

遺留分算定の対象となる財産は,まず被相続人が相続開始のときに有していた財産(遺贈された財産を含む)の価額に,贈与した財産の価額を加え,そこから債務全額を控除して算定されます(民法1029条1項)。

加算される贈与は,①相続開始前1年間になされた贈与,②(贈与契約の)当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って行った贈与です(民法1030条)

遺留分権利者に損害を与えることを知って行ったといえるには,贈与契約時に遺留分を侵害する事実を認識すればよく,損害を与える目的・意図までは必要ありません。また,遺留分権利者が誰であるか知っている必要はありません。

不相当な対価でなされた売買契約などの有償処分は,当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って行った場合には,対価を差し引いた残額が贈与として加算されます(民法1039条)。